コラム:建築を広げる 建築業界で生きる人たちの”働く舞台”を創るGRIID代表・しばたまる
建築系YouTubeとしては日本最大・登録者数2万人を超える
「僕は巨匠になりたい。-建築密着チャンネル-」の創設者で編集長の
しばたまるさんの活動の背景と彼が目指す世界に迫ります。
Q.まず最初に、学生時代にYouTube「僕は巨匠になりたい。-建築密着チャンネル-」を開設していらっしゃいますよね。開設の背景を教えていただけますか。
大学時代に建築学科に在籍していて、卒業設計を終えてそのまま大学院に行って、その後就職するかを悩んでいたのですが、就職するのが怖くなってしまって、最初は就活から逃げることがスタートだったんです。
怖くなったきっかけは、身近な人たちが建築業界に身を置くようになって、学生時代に知り得た情報の解像度はすごい低いんだなということを実感したことが大きいです。雑誌やメディアで見る建築の世界に憧れを持って働き始めた人たちが、働いてみると起きるギャップに打ちひしがれる姿を目の当たりにしました。
そういう姿を見て、社会的な意義を目指して働くけれど、純粋な自分の幸せが結構置き去りになっているのではないか?と感じてしまったんです。
そこからまずは、自分自身が建築業界で働くということを何も知らないので、取材してみようと思い、YouTubeを始めました。
Q.最初はご自身が、「建築業界で働く」ということを知りたいということで始めたYouTubeが徐々に大きくなっていった?
建築業界で働いてる人に1日密着して動画をあげるということを始めました。最初は僕が純粋に知りたいという面が大きくて、YouTubeはメディアとしての要素があるので、「取材です」と伝えれば、受け入れてくれてコンテンツが増えていきました。
YouTube以外にも、Webやブログ、SNSなどやってきたことのノウハウが増えていくと同時に、マーケティング関係のお仕事や、メディアを一緒に作るお仕事の依頼をいただくようになったので、そのままフリーランスとして独立し、会社になったのが今なんです。
Q.現在はGRIIDという会社の代表でもあるということで、お仕事について伺えますか。
共通して言えるのは建築分野の課題を解決するお仕事が中心です。
例えば、工務店や設計者とエンドユーザーを直接繋げるマッチングプラットフォームを、工務店の方々と一緒に作りました。
既存のプラットフォームでも工務店や設計者とエンドユーザーを繋げるサービスはあるのですが、結局そのプラットフォームに広告費を払える工務店や設計者が優先的に表示されるアルゴリズムになっていたり、広告費を許容する会社しか載ってないなどの課題があって、あまりフェアじゃないなと感じていて。
更に、実際にマッチングした後、プラットフォームを経由して家を建てたら総工事費の何%かを仲介費用として支払わなければならない。要は、マッチングするとフィーが発生する構造になってることが多いんです。作り手さんの立場からすると、そこを許容しないとお客さんと出会えないし、お客さんも自分に合う設計者に出会いたいだけなのに、マッチングで費用が取られてしまうアンフェアな感覚があるのではないかと感じていました。
そんな時に、工務店さんの方々から相談が来て一緒につくったのが、「家づくり百貨」というサービスです。これは、クラウドファンディングで1500〜1600万円ぐらいお金が集まって作りました。簡単にいうと、家づくりのマッチングメディアになっていて、マッチングを代行するというよりは、全国の工務店さんに自らYouTubeコンテンツを企画してもらって「家づくり百貨」のメディアを通して紹介していくようなサービスです。なので、いろんな工務店さんが「家づくり百貨」のYouTubeを上げて、マネジメントをその中枢メンバーがやっています。
収益の構造はどうなっているかというと、マッチング費を取るのではなく、工務店さんが自分たちの住宅の魅力や仕事に対する思いを発信する中で得たメディアの力で、メーカーさんとかにスポンサードしてもらい一緒に動画を発信していくような構造になっています。
僕たちは、家づくり百貨から先で、各工務店さんがマーケティング支援をしてほしいとご依頼をいただいたら一緒にお手伝いしていくという形を取っています。
家づくり百貨の場合は、コミュニティとして人が集まるところにお金を払っていただく形で、メディアを作り、クラウドファンディングでお金を集めて、その費用を使ってWebの制作や、構造的に黒字になるところまで支援をして、メディアオーナーさんにお渡しして、運営を移行し、実際に黒字で回っています。
他にもいろんな企業さんのYouTubeやメディア運用なども行っており、自分たちの働く舞台を自分たちで整えたいと思ってる企業さんをお手伝いする形でメディアを造成しています。他にもBIM業界のプラットフォーム兼メディアを作るお手伝いなどもしています。
Q.ご自身が始めたYouTubeから発展する形で仕事をされていますが、自身の活動と何か共通している点などはありますか?
多分、僕は建築そのものよりも人が好きなんだなと思っていて、特につくっている人が好きなんですよね。人を取材をするのも好きだし、仕事では建築業界で働く人たちを応援するためのメディアを作ったりするのも好きだし。人が働きやすい環境をつくるお手伝いがしたいというのが根幹にあります。
Q.これからのしばたまるさんの目標を教えてください。
「僕は巨匠になりたい」という名前でYouTubeを始めたので、僕が巨匠なりたいと考えて発信していると思っていただくことが多いんですが、僕自身が巨匠になりたいと思ってはいなくて。例えば、工務店のおじさんの働き方が面白かったり、畳職人の方が出てきたりと「いろんな巨匠になる道があるんだ」と思ってもらえたらいいなという感覚でスタートしているんです。
なので今後は、建築に携わる面白い人たちが、自分の番組をこのチャンネルで持ってくれるような状況になったら面白いなと思っていて、建築業界における巨匠という概念の多様性をチャンネルで表現できたらと思っています。